2024/09/11
液液共培養法によって分離された腸内細菌
腸内細菌は、ヒトの生理機能や多様な疾患に関係することから、医薬品開発など様々な産業分野で注目されています。したがって、難培養微生物や新種などの分離、培養、分類は、新たな生菌製剤の開発に必要不可欠です。これまで、いくつかの新種や難培養微生物が共培養によって分離されていますが、固体培地の代わりに液体培地を用いた液液共培養法を用いて菌株を単離した例はあまりありません。最近、便希釈液を生育支持菌として、支持菌の産生する代謝産物により、フィルター濾過(孔径0.45 µm)によって選別した極小の未知細菌種の生育促進と分離が期待される新しい培養法である液液共培養法を用いて、湾曲状の特徴を有するWaltera intestinalis(JCM 36211)が分離されました。W. intestinalisはこれまで仔豚からしか分離されておらず、ヒトから分離されたのは今回が初めてとなります。また、W. intestinalisとともに、Waltera属の2番目の菌種となるWaltera acetigignens(JCM 36210およびJCM 36378)も分離されています。分離株の細胞サイズは、生育初期では短く細く、培養時間が経つごとに長く太くなることが確認されており、培養初期には分離株はフィルターを通過し、後に伸長するというユニークな特徴を持つことが示唆されています。液液共培養法は、腸内細菌の分離方法にとどまらず、今後、さまざまな環境の微生物の分離への応用が期待されています。
Waltera acetigignens JCM 36210 (light micrograph of cells) |
Waltera acetigignens JCM 36210 (scanning electron micrograph of cells) |