真菌から分離された真菌

2023/09/01

真菌から分離された真菌

 真菌が異なる真菌種を基質として利用する種を菌寄生菌と呼びます。20世紀より以前から担子菌門の大型キノコや子のう菌門の糸状菌を宿主とした菌寄生菌の生態学的・分類学的研究が進められてきました。興味深いことに菌寄生性は独立して複数回獲得されてきたことが分かっています。そのため、その寄生様式も菌種ごとに極めて多様です。たとえば大型のキノコのウロコオクバタケ属に寄生するHypomyces laeticolor (JCM 10758T およびJCM 10759) は宿主キノコを覆ってしまいます (Tokiwa & Okuda 2005)。一方で、Acrodontium luzulae (JCM 39231 およびJCM 39234) は宿主のクロサイワイタケ科の菌体上では目立たず明確な子実体を形成しない種も知られています (Sa’diyah et al. 2021)。
 菌寄生菌は自然界で見つけることが難しく研究が遅れています。すでに分離された株についてもそれぞれの “菌株の性質” が未調査である事が多いです。菌寄生菌は生理活性物質の有用な探索源として注目されることもあり、その実体は氷山の一角が見えてきたに過ぎません。今後、菌寄生菌の菌株を利用した多角的な研究が期待されています。皆様のご利用をお待ちしております。


参考文献
Tokiwa, T. and Okuda, T.
Japanese species of Hypomyces and its anamorph III.
Mycoscience 46: 294-302, 2005.
DOI: 10.1007/s10267-005-0249-5.

Sa’diyah, W., et al.
Notes on some interesting sporocarp-inhabiting fungi isolated from xylarialean fungi in Japan.
Diversity 13: 574, 2021.
DOI: 10.3390/d13110574.

 

Hypomyces laeticolor (JCM 10758T)
(Colony on PDA)
Acrodontium luzulae (JCM 39231)
(Colony on PDA)
Acrodontium luzulae (JCM 39231)
(Spore of JCM 39231)


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