好気条件下で生育できる絶対共生性の好熱好酸性DPANNアーキア
DPANN群は、「超門」に相当する巨大なアーキア系統群として、2013年に提唱されました。全アーキアの進化系統樹において、最も根元に近い位置で分岐した系統群であることが示唆されています。DPANNアーキアは、温泉や土壌など様々な環境に生息し、特に貧栄養の地下水環境では優占することもありますが、その生態学的な役割は不明です。これまでに1000種近くのDPANNアーキアのゲノムが解読されておりますが、実験室での培養に成功しているDPANNアーキアは10種程度であり、その全てが生育に宿主を必要とする絶対共生性です。しかしながら、その共生メカニズムは全くと言っていいほど明らかにされていません。このようにDPANNアーキアは、生物の生理・生態・進化を理解する上で、非常に興味深い研究対象です。現在JCMでは、好気条件下で生育できる好熱好酸性DPANNアーキアを2株公開しております。
Nanobdella aerobiophila JCM 33616T
“Microcaldus variisymbioticus” JCM 33787T
N. aerobiophila JCM 33616Tは”Nanoarchaeota“暫定門に、”M. variisymbioticus” JCM 33787Tは”Microcaldota“暫定門に、それぞれ属します。どちらの株も絶対共生性であり、宿主となるアーキアとの共培養体として提供しております。
参考文献:
Kato et al.
Nanobdella aerobiophila gen. nov., sp. nov., a thermoacidophilic, obligate ectosymbiotic archaeon, and proposal of Nanobdellaceae fam. nov., Nanobdellales ord. nov. and Nanobdellia class. nov.
Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 72: 005489, 2022.
DOI: 10.1099/ijsem.0.005489
Sakai et al.
Insight into the symbiotic lifestyle of DPANN archaea revealed by cultivation and genome analyses.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 119: e2115449119, 2022.
DOI: 10.1073/pnas.2115449119
プレスリリース:
アーキアに寄生するナノアーキア -微生物ダークマター代表格のリソース化に成功-
https://www.riken.jp/press/2022/20220822_1/index.html
DPANN群に属する難培養性アーキアの培養に成功 -寄生性アーキアの新しい生理生態を発見-
https://www.riken.jp/press/2022/20220117_2/index.html
Nanobdella aerobiophila JCM 33616T (左側の二つの小さな細胞)