酵母による果糖の発酵能力と資化能力

2022/12/16

酵母による果糖の発酵能力と資化能力

 酵母には1,500以上の種が知られており、このうちのおよそ半数が子嚢菌門Ascomycotaに属します。Saccharomyces cerevisiaeSchizosaccharomyces pombeに代表される子嚢菌酵母では、7割以上の種でアルコール発酵を行う能力があります。しかし、アルコール発酵に利用できる糖類の種類は酵母の種によってまちまちで、表現型Phenotypeとして違いがあることが古くから知られてきました。いわば、菌種(あるいは菌株)によって“個性”がある、と言えます。例えば酵母の代表格であるS. cerevisiae ではブドウ糖Glucose・麦芽糖Maltose・ショ糖Sucroseをアルコール発酵しますが、乳糖Lactoseではアルコール発酵が観察されません。

 DNAの存在が知られていなかった時代から、こういった表現型の相違によって酵母の種の識別は行われてきました。こういった背景から、ブドウ糖やショ糖といった一般的な糖類に対する酵母の発酵能力や資化能力(栄養源として利用する能力)のデータは、連綿と蓄積してきました。しかしなぜか、果糖Fructoseの発酵能力と資化能力に関するデータは、ほとんどありませんでした。

 欠落していた果糖の発酵能力・資化能力について、JCMが保存している酵母388株を用いて検証したところ、302株(78%)が果糖を発酵できること、全株が果糖を資化できることを発見しました。これらは、研究材料として利用される酵母の利用価値をさらに高める基礎データ(菌株付随情報)であるといえます。酵母たちには、見過ごされている“個性”がまだまだあるのかもしれません。

 ではなぜ、果糖に関する発酵能力・資化能力のデータは欠落していたのか?その経緯を調べてみると思いもよらない背景があることが判明していき………ご興味のある方は是非、下記の文献またはプレスリリースをご参照ください。


参考文献
Rikiya Endoh, Maiko Horiyama, and Moriya Ohkuma,
“D-Fructose assimilation and fermentation by yeasts belonging to Saccharomycetes: Rediscovery of universal phenotypes and elucidation of fructophilic behaviors in Ambrosiozyma platypodis and Cyberlindnera americana“, Microorganisms, microorganisms9040758
https://doi.org/10.3390/microorganisms9040758


プレスリリース
酵母の果糖発酵と資化能力を再発見
-388株の酵母を使って見過ごされてきた能力を検証-
https://www.riken.jp/press/2021/20210405_1/index.html

 


Ethanol fermentation by yeast (130MB)



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