JCM Mail News No. 72

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RIKEN BioResource Center - Japan Collection of Microorganisms
            JCM Mail News (電子メール版) No. 72
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独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(JCM)
が公開している微生物等の最新情報をお届けします。

━━━━ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
● 夏期一斉休業(平成23年8月19日~21日)のお知らせ
● 今月のリソース紹介「芳香族化合物カルバゾールの資化性細菌について」
● JCM株の分類情報の追加と利用論文の PubMed LinkOut について
● 日本微生物資源学会第20回大会の御礼
● 日本菌学会第57回大会の参加報告
● 埋橋志穂美研究支援パートタイマーが「日本菌学会奨励賞」を受賞
● 遠藤力也協力研究員らが「日本微生物資源学会第20回大会優秀発表賞」を
 受賞
● 新規公開微生物株(2013年6月公開)
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┃  夏期一斉休業(平成25年8月19日~21日)のお知らせ
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 理化学研究所では、今夏の節電対策の一環として、エネルギー節約、環境への
配慮のために昨年に引き続き本年も全所員が一斉に夏季休暇を取ることになりま
した。
 バイオリソースセンターにおきましても、期間中を休業日として節電に協力す
ることとし、バイオリソースの提供等にかかわる業務を休止させていただきます。
 ユーザーの皆様、関係者の皆様には大変ご不便をおかけすることになりますが、
ご理解とご協力の程、何卒宜しくお願い申し上げます。

1. 一斉休業の期間: 平成23年8月19日(月)より21日(水)の3日間
2. 停止する業務
    ・ 電話、メールでのお問合せへの対応
    ・ 期間中に受領したリソースの提供申込みへの対応
    ・ リソースの発送
    ・ 見積り書、請求書等の発送

尚、8月16日(金)まで、また8月22日(木)からは通常通り業務を行います。

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┃  今月のリソース紹介「芳香族化合物カルバゾールの資化性細菌について」
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 環境から見出される細菌の中には芳香族化合物等の難分解性環境汚染物質の分
解能を保有しているものがあり、汚染環境浄化技術(バイオレメディエーション)
や物質変換への利用を目指す研究に加え、芳香族化合物分解という特殊な能力の
獲得や分解能力の伝播のメカニズムを探る研究の材料としても用いられています。
 JCMでは、様々な芳香族化合物の資化性・分解性を有する菌株を保有しており
ます。一例として、含窒素複素環式芳香族化合物であるカルバゾール (CAS no. 
86-74-8) の資化性細菌をご紹介します。カルバゾールはコールタールに含まれ、
工業原料として広く使われています。また、ダイオキシン類の炭素骨格に類似す
ることから、ダイオキシン類の細菌分解のモデル物質として研究されています。
特に研究が進められている代表的な分解細菌として、Pseudomonas resinovorans
CA10株 (=JCM 16565) が挙げられます。CA10株はカルバゾールを唯一の炭素
源として利用できる細菌として東京大学の大森俊雄教授 (現芝浦工業大学大学院
工学研究科教授、東京大学名誉教授)、野尻秀昭教授らのグループにより分離され、
精力的に研究が進められてきました。これまでにカルバゾール分解に関わる遺伝
子群や、それらを情報化した巨大プラスミドpCAR1の全塩基配列、プラスミドの
接合伝達による資化性能力伝播のメカニズム、カルバゾール分解関連酵素の立体
構造など、種々の性状が明らかにされています。JCMにはCA10株の他に4株のカル
バゾール資化性細菌 (JCM 16566-16569) が寄託されています。JCMオンライン
カタログの「菌株データ検索」欄に、キーワード「carbazole」を入力して検索
することでこれらの菌株を一覧できますので、お試し下さい。
http://www.jcm.riken.jp/cgi-bin/jcm/jcm_kojin?ANY=carbazole

参考文献
Ouchiyama et al. 1993. Biodegradation of carbazole by Pseudomonas
   spp. CA06 and CA10. Biosci. Biotechnol. Biochem. 57: 455-460.
Nojiri et al. 2001. Genetic characterization and evolutionary 
   implications of a car gene cluster in the carbazole degrader 
   Pseudomonas sp. strain CA10. J. Bacteriol. 183: 3663-3679.
Nojiri 2012. Structural and molecular genetic analyses of the
   bacterial carbazole degradation system (Review). Biosci.
   Biotechnol. Biochem. 76:1-18.

飯田 敏也(遺伝子解析・品質管理担当)

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┃  JCM株の分類情報の追加と利用論文の PubMed LinkOut について
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 JCMオンラインカタログデータベースにおいては、従来、微生物株の属・種の学
名情報のみを掲示しておりましたが、Bacteria, Archaeaの微生物株について、
NCBI taxonomy databaseに準拠した分類階級(taxonomy rank)に関する情
報を掲載することを始めました。門、綱、目、科など属より上位の分類情報を示し
てあります。酵母・糸状菌のJCM株についても今後掲載を予定しております。
 また、NCBI taxonomy databaseにJCM株が引用されている場合、その微生物
種についてのページへのリンクを可能といたしました。多くの場合、引用は
Bacteria, Archaeaのtype strain に限られますが、JCM オンラインカタロ
グの最下段付近の NCBI taxonomy ID の番号をクリックしてください。NCBI
の web page からは、当該株の遺伝子配列・タンパク質配列・ゲノム情報や PubMed
の論文情報などへもリンクしています。
 いずれもJCMオンラインカタログデータベースの検索ページ
(http://www.jcm.riken.jp/JCM/catalogue_J.shtml) などからご興味
のある微生物株のカタログページを開いてご覧になってください。
 JCM株を利用した論文情報は、JCM や NBRP(ナショナルバイオリソースプロジェ
クト)のホームページ等から紹介していますが、PubMedに論文が掲載されている
場合、PubMedの論文情報ページの論文要旨の下にある “LinkOut” から NBRP
の利用論文情報ページへのリンクが付与されました。NBRPの論文情報からは、利
用されたJCM株のオンラインカタログのページにリンクされています。2007年か
らのJCM株の利用論文について対応しております。一例ですが、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23099260 でご覧ください。

大熊 盛也(室長)

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┃  日本微生物資源学会第20回大会の御礼
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 平成25年6月27日(木)~ 28日(金)の2日間、つくば国際会議場にて日本微
生物資源学会第20回大会を開催いたしました。JCMが大会の世話役を務めさせて
いただきました。100名を超える参加をいただき、口頭・ポスターの一般講演、
シンポジウム「微生物ゲノムと研究基盤」と実務ワークショップ「カルチャーコ
レクションの生物多様性条約(CBD)への取り組み方」の講演に活発な討論をいた
だき、盛況の大会とすることができました。この場を借りて、参加者、講演者、
ご支援いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

大熊 盛也(室長、大会長)

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┃  日本菌学会第57回大会の参加報告
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 日本菌学会第57回大会(大会会長: 矢口行雄)ならびに各種委員会が、平成
25年6月7日(金)~9日(日)に東京農業大学世田谷キャンパスにおいて開催さ
れました。大会では口頭発表(83演題)、ポスター発表(29演題)、日本菌学会
奨励賞受賞講演(埋橋志穂美; 本年5月より当所に勤務)、メルボルン規約(命
名規約)関連の特別報告(3演題)、「菌食の世界: コウジカビときのこ」と題
した公開シンポジウム(4演題)、アマチュア研究者の取り組みに関する展示、
そして菌学会として初めて試みた「高校生ポスター発表」が行われました。
 また、大会前日の編集委員会ではアジア諸国からのMycoscienceへの投稿数急
増に対する対応策などが検討されました。懇親会ではたくさんの美酒が振る舞わ
れ、菌食の世界をテーマとした公開シンポジウムといい、農大で31年ぶりに開催
された「農大ならではの菌学会年次大会」であったと言えましょう。

岡田元(専任研究員)

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┃  埋橋志穂美研究支援パートタイマーが「日本菌学会奨励賞」を受賞
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 日本菌学会第57回大会(平成25年6月8日-9日、於東京農業大学世田谷キャンパ
ス)において、埋橋志穂美研究支援パートタイマーが、Pythium属の分類および
分子系統学的研究の業績により「日本菌学会奨励賞」を受賞しました。
http://www.mycology-jp.org/~msj7/WL_aboutMSJ_J/MSJaward_J.html
https://brc.riken.jp/news/report_20130617_01.html
同賞は、菌学領域の進歩に寄与する研究業績を挙げ、なお将来の発展が期待され
る35才以下の学会員に対して授与されるものです。

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┃  遠藤力也協力研究員らが「日本微生物資源学会第20回大会優秀発表賞」を
┃  受賞
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 日本微生物資源学会第20回大会(平成25年6月27日-28日、於つくば国際会議
場)において、遠藤力也協力研究員らが発表した「森に酵母資源の宝庫を見つけ
る」が優秀発表賞を受賞しました。また、東京農業大学 黒川祐菜技術員らと共
同で飯野隆夫研究員、大熊盛也室長が「Stenotrophomonas maltophila の
分類学的研究」の発表により、同賞を受賞しました。
 同賞は、微生物資源学の発展と同学会大会の活性化に寄与する優れた発表に対
し授与されるもので、例年3件が選ばれています。

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┃  新規公開微生物株(2013年6月公開)
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細菌
Algibacter aquimarinus                JCM 18287  Type strain
Blastopirellula cremea                JCM 17758  Type strain
Brevundimonas abyssalis               JCM 18150  Type strain
Caldicoprobacter guelmensis           JCM 17646  Type strain
Dehalogenimonas alkenigignens         JCM 17062  Type strain
Desulfotomaculum peckii               JCM 17209  Type strain
Fonticella tunisiensis                JCM 17559  Type strain
Halanaerobium sehlinense              JCM 18213  Type strain
"Luminiphilus syltensis"              JCM 17770  Proposed type strain
Nonomuraea wenchangensis              JCM 18322  Type strain
Oscillibacter ruminantium             JCM 18333  Type strain
"Peptostreptococcus canis"            JCM 19103  Proposed type strain
Polycladomyces abyssicola             JCM 18147  Type strain
Pontimonas salivibrio                 JCM 18206  Type strain
"Pseudomonas formosensis"             JCM 18415
Sagittula marina                      JCM 17627  Type strain
Salinicoccus sesuvii                  JCM 19029  Type strain
"Salinicola peritrichatus"            JCM 18795  Proposed type strain
Salinivibrio sharmensis               JCM 19030  Type strain
Sphingobacterium thermophilum         JCM 17858  Type strain

アーキア
Halopelagius fulvigenes               JCM 17506  Type strain
Palaeococcus pacificus                JCM 17873  Type strain

真菌
Kluyveromyces lactis                  JCM 5219
Lachancea nothofagi                   JCM 16504

詳細は以下のサイトから検索できますのでご利用ください。
http://www.jcm.riken.jp/JCM/catalogue_J.shtml

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  (inquiry@jcm.riken.jp)まで「メールニュース不要」の旨をご連絡下さい。
※ 当メールへのご質問などは、微生物材料開発室(inquiry@jcm.riken.jp)
  までお送り下さい。
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  http://www.jcm.riken.jp/JCM/mailnews.shtml
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発行
独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター
微生物材料開発室 (JCM)
inquiry@jcm.riken.jp
http://www.jcm.riken.jp/
2013年7月16日
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