JCM Mail News No. 46

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RIKEN BioResource Center - Japan Collection of Microorganisms
            JCM Mail News (電子メール版) No. 46
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独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(JCM)
が公開している微生物等の最新情報をお届けします。

━━━━ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
● 今月のリソース紹介「精度管理用菌株について」
● 新規公開微生物株(2010年7-8月公開)
● JCMから入手可能なゲノム塩基配列決定株のリストをホームページに掲載しま
   した
● 「第9回国際菌学会議」参加報告
● 大量依頼の場合に得られる微生物材料提供手数料割引制度が変更されました
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┃  今月のリソース紹介「精度管理用菌株について」
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 菌株の品質を保ったまま保存するのは難しいことです。特に精度管理用に使用
している菌株については十分に注意しなければいけません。継代培養を繰り返し
たり、研究室間で菌株を手渡すことによって、当初の品質が失われて精度管理に
は適さない株に変異している場合があります。Pseudomonas aeruginosa PAO1株
は世界中で広く使用されている株ですが、「研究室に保存されているPAO1株の遺
伝子が変化している」という論文が今年の初めに発表されました。
(J. Bacteriol. 192, 1113-1121, 2010) これは研究者間の手渡しで起こったこ
とだと考えられます。
JCMでは厳しい品質管理のもとに菌株を提供しております。精度管理用の菌株を
継続的に使用する場合は、変異を起こさないように凍結保存することをお勧めい
たします。菌株が手元に届きましたら、培養した菌株を分散媒に分注して必要本
数を凍結保存(-80℃)して下さい。使用の際にはその一本を取り出し、試験が
終わったら菌株は廃棄します。次に精度管理を行うときは新たに凍結保存した一
本を取りだして使用します。こうすることによって同時期に作成した菌株は同じ
品質を持っていることが期待できます。
JCMが提供している株で精度管理に使用されている菌株の代表的なものは以下の
とおりです。

Campylobacter jejuni         JCM 2013     培地・性状
Enterobacter aerogenes       JCM 1235     培地・性状
Enterobacter cloacae         JCM 1232     培地・性状
Escherichia coli             JCM 5491     培地・性状・抗生物質
Helicobacter pylori          JCM 12093    培地・性状
Klebsiella pneumoniae        JCM 1662     培地・性状・抗生物質
Legionella pneumophila       JCM 7571     培地・性状
Listeria monocytogenes       JCM 7671     培地・性状・抗生物質
Pseudomonas aeruginosa       JCM 14847    培地・性状
Pseudomonas aeruginosa       JCM 6119     培地・性状・抗生物質
Staphylococcus aureus        JCM 2413     培地・性状・抗生物質
Staphylococcus aureus        JCM 2874     培地・性状
Staphylococcus epidermidis   JCM 20345    培地・性状・抗生物質

品質管理をされた菌株を皆様方に提供することは、研究支援としての我々の大切
な業務の一つだと考えております。その他の菌株ならびに不明な点につきまして
はお問い合わせください。

小迫 芳正 (好気性・通性嫌気性細菌担当)

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┃  新規公開微生物株(2010年7-8月公開)
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細菌
Actinaurispora siamensis                      JCM 15677   Type strain
Actinocatenispora rupis                       JCM 16894   Type strain
Actinomadura flavalba                         JCM 16896   Type strain
Actinopolymorpha alba                         JCM 16897   Type strain
Amycolatopsis ultiminotia                     JCM 16898   Type strain
Bacteroides clarus                            JCM 16067   Type strain
Bacteroides fluxus                            JCM 16101   Type strain
Bacteroides oleiciplenus                      JCM 16102   Type strain
Bacteroides sartorii                          JCM 17136   Type strain
Brevibacillus fluminis                        JCM 15716   Type strain
Brevundimonas basaltis                        JCM 15911   Type strain
Caldicellulosiruptor obsidiansis              JCM 16842   Type strain
Chelatococcus sambhunathii                    JCM 14988   Type strain
Clostridium aminovalericum                    JCM 11016   Type strain
Corynebacterium maris                         JCM 17018   Type strain
Cronobacter dublinensis subsp. lactaridi      JCM 16468   Type strain
Cronobacter dublinensis subsp. lausannensis   JCM 16469   Type strain
Desulfovibrio oceani subsp. galateae          JCM 15971   Type strain
Desulfovibrio oceani subsp. oceani            JCM 15970   Type strain
Gaetbulibacter jejuensis                      JCM 15976   Type strain
Gordonia hankookensis                         JCM 16947   Type strain
Gordonia kroppenstedtii                       JCM 16948   Type strain
Gordonibacter pamelaeae                       JCM 16334   Type strain
Gulbenkiania indica                           JCM 15969   Type strain
Halomonas jeotgali                            JCM 15645   Type strain
Jeotgalicoccus huakuii                        JCM 15687   Type strain
Kistimonas asteriae                           JCM 15607   Type strain
Lactococcus chungangensis                     JCM 17100   Type strain
Leifsonia antarctica                          JCM 17020   Type strain
Leifsonia kafniensis                          JCM 17021   Type strain
Leucobacter chironomi                         JCM 17022   Type strain
Marinicella litoralis                         JCM 16154   Type strain
Marinitoga litoralis                          JCM 15581   Type strain
Microbacterium azadirachtae                   JCM 15681   Type strain
Microbacterium invictum                       JCM 17023   Type strain
Micrococcus endophyticus                      JCM 16951   Type strain
Micromonospora pisi                           JCM 17025   Type strain
Moraxella bovis                               JCM 17254   Type strain
Mucilaginibacter dorajii                      JCM 16601   Type strain
Mycobacterium paraseoulense                   JCM 16952   Type strain
Nocardioides humi                             JCM 14942   Type strain
Parapedobacter composti                       JCM 15978   Type strain
Parapedobacter luteus                         JCM 15977   Type strain
Prevotella dentasini                          JCM 15908   Type strain
Propionibacterium acidifaciens                JCM 16571   Type strain
Propionispora vibrioides                      JCM 17185   Type strain
Psychrobacter aestuarii                       JCM 16343   Type strain
Pyramidobacter piscolens                      JCM 16336   Type strain
Rhizomicrobium palustre                       JCM 14971   Type strain
Rhizomicrobium palustre                       JCM 14972
Rhizomicrobium palustre                       JCM 14973
Rhodococcus jialingiae                        JCM 16906   Type strain
Ruegeria marina                               JCM 16262
Saccharopolyspora phatthalungensis            JCM 16708   Type strain
Slackia equolifaciens                         JCM 16059   Type strain
Slackia isoflavoniconvertens                  JCM 16137   Type strain
Sphingopyxis soli                             JCM 15910   Type strain
Succinatimonas hippei                         JCM 16073   Type strain
Umboniibacter marinipuniceus                  JCM 15738   Type strain
Verrucosispora sediminis                      JCM 15670   Type strain

アーキア
Halogranum amylolyticum                       JCM 16428
Halogranum gelatinilyticum                    JCM 16426
Haloplanus vescus                             JCM 16055   Type strain
Natronorubrum sediminis                       JCM 15982   Type strain

真菌
Debaryomyces singareniensis                   JCM 14518   Type strain
Malassezia caprae                             JCM 14561   Type strain
Malassezia equina                             JCM 14562
Rhodotorula arctica                           JCM 13290   Type strain
Rhodotorula arctica                           JCM 13291
Rhodotorula arctica                           JCM 13292
Wickerhamomyces patagonicus                   JCM 16381   Type strain
Zygosporium echinosporum                      JCM 11116

酵母様微細藻類
Prototheca cutis                              JCM 15793   Type strain

詳細は以下のサイトをご覧下さい。
http://www.jcm.riken.jp/JCM/catalogue_J.shtml

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┃  JCMから入手可能なゲノム塩基配列決定株リストをホームページに掲載しま
┃  した
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 前回のメールニュースでご案内した、JCMから入手可能なゲノム塩基配列決定
株の情報をリストとして以下のサイトに掲載しました。どうぞご利用ください。

http://www.jcm.riken.jp/JCM/genomelist.shtml

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┃  「第9回国際菌学会議」参加報告
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 イギリス(英)スコットランドの首都で、美しい古城や教会などがある世界遺産
都市エジンバラにおいて2010年8月1-6日に開催された「第9回国際菌学会議
(IMC9: The biology of fungi); 英菌学会主催」(http://www.imc9.info/) な
らびに関連会議に参加する機会を得ましたので、簡単にご報告いたします。IMC
は4年毎に開かれる真菌類 (fungi) 関係の大きな国際会議で、今回は80ヶ国以上
から1700名以上の参加者を得ました(日本からの参加は約110名)。
 私のエジンバラでの1週間は7月30日夕方に到着したエジンバラ空港でのロスト
バゲージ事件から始まりました。幸い1日遅れで荷物が届き、31日夕方にエジン
バラ大学で行われた国際菌学会(IMA; http://www.ima-mycology.org; 本会の歴
史はこのサイトからダウンロードできる雑誌 "IMA Fungus" を参照)執行委員会
にぎりぎりで間に合いました。この会議ではSimmons博士(米)やHawksworth博士
(西/英)などの学界重鎮ともお会いでき、Crous IMA会長(2006-2010; 蘭)の議
事進行のもと、委員を含む約20名の出席者により課題を審議し、最後に次期執行
委員の選挙が行われました(2010-2014年の新会長はTaylor教授(米)に決定)。
さらに、会議終了後はフォーマルな夕食会がRead教授(IMC9大会運営委員会長;
IMA副会長, 2010-2014)のご配慮により催されました。
 IMC9は一夜明けた8月1日より町の中心部にある近代的な国際会議センター
(EICC)と110年以上前に建てられた格式あるUsher Hall (UH) で始まりました。
これらの会場は徒歩5分程の距離にあり、矢印代わりにかわいらしいベニテング
タケのシールが歩道に貼られていました(記念にはがして持ち帰った人もいたの
では?)。
 UHでの開会式はRead大会運営委員会長とBoddy英菌学会会長の挨拶から始まり
、バイオリンとチェロの合奏をはさんで、Bruns米菌学会会長からCrous IMA会長
へのIMA gavel贈呈式へと進みました。なお、gavelとは議長が注意を促すためな
どにたたく小槌で、米菌学会ではクリの木製のものが今でも使われています。今
回は、米菌学会会員であるSeifert博士(ICTF委員長; 加)とWhite博士(加)が中心
となり、世界7大陸から集めた木材を用いて(南極大陸のものは化石を使用)寄
せ木細工の要領で「IMAの公式小槌」を作製しました。日本(アジア大陸)から
は私を介して森林総合研究所からケヤキ材(東アジアの一部と日本に分布し、堅
くて木目が美しい)が提供されました。
 開会式に引き続き、スコットランドの民族衣装「キルト」を身にまとった
Taylor教授による格調高い基調講演 (The poetry of mycological
accomplishment and challenge) が行われました。その後、場をEICCに移し、歓
迎レセプションが行われ、世界中の菌学者が夜まで再会と出会いを喜びあいまし
た。
 翌日からは総会講演がUHにおいて9-10時まで毎日行われましたが、特に、
Hibbett教授(米)の講演 (Knowing and growing the fungal tree of life) は私
の専門に近いため理解しやすく、またユーモアを交えたものでしたので、皆から
好印象を受けていたようです。口頭発表形式のIMC9シンポジウム(45 symposia)
では基礎から応用にわたる以下の5つのテーマが設定され、10時半-18時半までUH
とEICCの計5会場で活発な発表と討論が行われました: 1) 細胞生物学、生物化
学、および生理学; 2) 環境、生態学、および相互作用; 3) 進化、生物学的多様
性、および分類学; 4) ゲノミクス、遺伝学、および分子生物学; 5) 病因論およ
び疾病管理。また、ポスター発表(2-5日; 約1200題)、菌類分類学国際委員会(
ICTF; http://www.fungaltaxonomy.org/?page_id=1 )の報告会/執行委員会(2日)
、菌類命名に関するセッション(3-5日)が指定日に午後2時間ずつ行われました。
後者2つは私にとって特に重要なため可能な限り参加し、録音や写真での記録を
取りましたので、別の機会に詳しく報告したいと思います。なお、JCMからは安
博士と私が参加し、菌類群集解析と系統分類に関するポスター発表(4日)をそれ
ぞれ行いました。今回のポスター発表・展示はテーマ毎に1日ずつしか行えず、し
かも上述の通り重要な委員会やセッションと重なり、発表者と十分な意見交換の
時間がとれなかったことはとても残念でした。また、興味深いものが多いのです
が、テーマ的な理由からIMC9シンポジウムには含めることができなかった
Special Interest Group meetings(参加するためには追加料金を払う)が開会
式前の午前と午後に別枠で行われたことも参加者からは不評であったと思われま
す。
 その他のイベントとしては、英菌学会編集委員会のパーティー(編集委員とし
てBoddy会長などと話すことができた; 編集会議自体にはICTFの会議が重なった
ため参加できなかった)と米英菌学会などの主催による王立エジンバラ植物園で
のレセプション(日本と関係の深い故Corner博士のキノコ標本が保管されている
;思い出の昭南博物館(中公新書)を参照)に参加しました。
 国際会議では講演やポスター発表を聞くことはもちろん大切ですが、私にとっ
て最も重要な目的は世界中の多くの友人や著名な菌学者に会うことです。今回は
、キューバのCastaneda Ruiz博士に初めて会えたことが大きな収穫でした。大会
初日に受付を済ませ、ロビーのソファーに座って電子メールをチェックしている
私に、名札を見てニコニコしながら話かけてきたのが彼でした。南米の研究者と
もこれから仕事の輪が広がることを願っています。
 次回のIMC10は2014年にタイのManoch教授(IMA副会長, 2010-2014)のもとで開
催されることが6日の閉会式で正式発表されました(都合により私は閉会式を欠
席)。同じアジアの一員として、IMC10のためにも自分なりに努力したいと思い
ます。最後に、IMC9を成功に導いていただいた英菌学会ならびにIMAをはじめと
する協力機関や関係者の皆様に敬意を表します。

岡田 元(専任研究員; IMA & ICTF委員)

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┃  大量依頼の場合に得られる微生物材料提供手数料割引制度が変更されました
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発行
独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター
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2010年9月1日
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